大企業だからこそ生み出せる社会へのインパクトを目指す。
「docomo STARTUP」が目指す、個人・会社・社会の未来が三方良しになる新規事業創出プログラムとは
流行の短縮化や商品の多様化による事業の短命化や、少子高齢化・人口減少による市場の変化を踏まえ、新規事業創出に取り組む大企業が増えています。NTTドコモグループ(以下、ドコモグループ)も例外ではなく、次の柱となる事業の創出を目指してきました。
2023年7月には、NTTドコモの社員を対象としていた新規事業創出プログラム 39worksをリニューアル。NTTドコモに加え、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアを含むドコモグループ全社員を対象とした新規事業創出プログラムdocomo STARTUPとして、制度や内容を大幅にアップデートしました。
docomo STARTUPがドコモグループ、そして社会にもたらしたい影響とはどのようなものか。そのために、どのようなプログラムに再構築したのか。docomo STARTUPの責任者であり、事業開発室の室長である原 尚史 さんにお話を伺いました。
INTERVIEW
INTERVIEW 01
求められる早く動ける組織への変革
──docomo STARTUPにリニューアルされる以前から、新規事業創出に取り組まれてきていますよね。大企業が新規事業に取り組む必要性について、どうお考えでしょうか?
原 尚史さん(以下、原さん):大企業にとって、新規事業創出は重要な成長戦略です。私たちは、次の成長の柱になるような事業を創っていかなければいけない段階に来ています。
ドコモグループではこれまでも、金融サービスや映像サービスやコンテンツサービスなど、新たな事業領域への拡大に取り組んできています。しかし、これらはドコモの事業の柱である通信事業の強みを生かした周辺領域への事業拡大でした。
今後は、日本市場だけではなくグローバル市場で戦っていくためにも、先端的な発想を生かし領域にとらわれることなく事業を創っていく必要があります。
──いわゆる「革新領域」と呼ばれるような、社会にとっても新しい領域に挑んでいくことが必要だということですね。
原さん:そうです。しかも、従来のやり方で新規事業を創出すればいいわけではありません。先が読みにくい時代のなかで、革新領域での新規事業創出を実現するには、早く動ける組織になることが欠かせません。
そのために、39worksの時からリーンスタートアップという手法を採用しています。リーンスタートアップでは、ムダを省き、スピーディな仮説検証を繰り返すようなプロセスを重視します。大企業もこうした時代に即した考え方を身につけ、実行できるようになっていかなければ、成長できない市場環境になっていると考えています。
会社の事業成長のためのみならず、組織を変革していくためにも新規事業創出をいかに行っていくのかは重要なのです。ただ、ドコモグループのような大企業が新規事業創出に取り組む意義は、それだけにとどまりません。
INTERVIEW 02
「起業家育成」という大企業が果たすべき責任
──事業成長と組織変革以外の意義は、どのようなものなのでしょう。
原さん:社会における責任を果たす意味もあると思っています。新たな事業を生み出すアントレプレナーは、社会に対して重要な役割を担います。一方で、次々と新しい事業を創っていく「シリアルアントレプレナー」と呼ばれる存在が、日本では非常に少ない。そのため、目指そうとする人が限られるという課題があります。
なぜ、そのような状態になってしまっているのか。そこには日本に浸透しているキャリア観が影響していると考えられます。日本でもファーストキャリアとして起業を選ぶ人が増えましたが、まだまだ少数派です。若い人の多くは「就活」のように大企業に入ることを目指して切磋琢磨してくれています。
そのため、優秀な人が大企業に集まりやすいという傾向にあります。優秀な人たちが集まる大企業には、「タレントを育てる・生かす」という責任があります。
──なるほど。優秀な人が集まる大企業こそ、その人たちを生かし、新しい事業を生み出せる人材として育て、社会にアントレプレナーシップを持つ人材を増やしていく責任があるということですね。
原さん:そう考えます。新規事業創出プログラムであれば社員個人がオーナーシップを持って一つの事業を担っていくという成長機会を与えやすくなります。
もちろん、大企業が新規事業に挑戦することは簡単ではないとわかっています。ただ、優秀な人たちに挑戦し成長できる機会を提供する責任を考えれば、ドコモグループには新規事業創出をやらないという選択肢はありません。
INTERVIEW 03
より大きな事業を共創する新規事業創出プログラムへ
──自社だけでなく、社会の未来も見据えて、新規事業創出に取り組む。プログラムのリニューアルも、そうした背景があったかと思いますが、39worksからdocomo STARTUPへのリニューアルにはどのような狙いがあったのでしょうか。
原さん:39worksはNTTドコモの社員がチャレンジできる場、社員の思いを形にするような場として設計されていました。そのため、新しい事業アイデアを創る部分は担えていたものの、会社の成長につながる事業へ育てるところまでは達成できていませんでした。
docomo STARTUPへとリニューアルした背景には、新しい事業アイデアを創るゼロイチの部分に引き続き注力しながら、その先の大きな事業へと育てるところまでを担えるようにしたいという狙いがありました。
そのために必要な要素として、社内の制度設計、多種多様なステークホルダーとの連携、スタートアップエコシステムとの接続という3つの点を重視し、プログラムを更新しています。
──具体的には、どのような点が変化したのでしょうか。
原さん:まずは、社内制度を変えました。挑戦する人のモチベーションが高ければ高いほど、事業が大きく育つ可能性があがります。挑戦する人のリスクが小さく、リターンが大きくなるようプログラムを再構築しています。大きなリターンが、本人あるいはチームのモチベーションにつながり、成果につながることを期待しています。
2つ目は、ドコモグループをはじめ、NTTグループ、またはパートナー企業や自治体との連携強化です。連携は39worksでも行っていましたが、さらに強化していきます。連携先と二人三脚で、大きな事業を育て、日本社会や市場に貢献できるようにしていきたいという思いがあります。
最後に、ベンチャーキャピタルとの連携です。ベンチャーキャピタルからの資金調達を支援する仕組み「STARTUPコース」を新たに導入しています。スタートアップコミュニティと接続し、新たな事業を育てるプロの視点をお借りしながら、事業を成熟させていけたらと考えています。
──より社外の方との共創が強まっていきそうですね。
原さん:特にベンチャーキャピタルとの連携は全く新しい試みです。各新規事業が実現したいビジョンに共感する、相性の良いベンチャーキャピタリストの方々とご一緒できるように支援していきたいと考えています。そのためには、しっかりとしたビジョンを描き、ベンチャーキャピタリストと対等に向き合えるような事業やチームを育てていくことも重視しています。
INTERVIEW 04
シリアルアントレプレナーをドコモから社会へ
──社外との連携強化以外にも、「挑戦する人のリスクが小さく、リターンが大きくなるように」など、社内の変化も大きいように感じました。
原さん:プログラムを設計する私たち自身が、社員の可能性を信じているということの現れなのだと思います。ドコモグループには、起業家になれる人材が集まっていると信じています。
手前味噌ですが、ドコモグループの社員は、どこに出しても恥ずかしくない優秀な人ばかりです。誰もが、自由な発想力を持っていて、実務能力も高く、社会貢献意欲も高い。
一方で、新規事業創出については未経験な人がほとんどです。新規事業創出を経験する機会があれば、元々持っていた可能性が開かれるはず。docomo STARTUPには、これまでの取り組みで積み重ねてきたノウハウがあります。39worksの取り組みを開始してから、累計2,000件以上の事業アイデアを支援してきた歴史があります。
その積み重ねを経て、リニューアルしたプログラムに参加してもらうことで、社会的貢献意欲の高いドコモグループの社員が起業家として社会に出ていく未来の実現を強く信じています。
──最後に、docomo STARTUPが目指すビジョンを教えてください。
原さん:シリアルアントレプレナーがdocomo STARTUPからどんどん育っていき、事業がどんどん生まれ、日本のスタートアップコミュニティの広がりにドコモグループも貢献し、そこからまた新たなシリアルアントレプレナーが育っていく。その循環が日本の社会に定着していく。そんな未来をイメージしています。
この好循環がドコモグループにとっても、日本経済にとっても活力になっていくことを目指していきます。ドコモグループの社員のみなさんはもちろん、パートナーやベンチャーキャピタルの方々も、ぜひdocomo STARTUPにご期待ください。