アイデアを選び育てていく。
ボトムアップ型の
新規事業創出コンテスト
docomo STARTUP CHALLENGE
docomo STARTUPは、2023年7月に39worksからリニューアルを遂げた新規事業創出プログラムです。
39worksでは、約6年間にわたり、NTTドコモの全社員を対象にしたアイデア創出コンテストを実施してきました。docomo STARTUPにリニューアルし、アイデア創出コンテストも新たな活動へと変わっています。
現在は、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアを含むドコモグループ全社員を対象に新規事業創出コンテスト CHALLENGEが開催されています。
どういったコンテストに生まれ変わったのか、CHALLENGE担当の金 東賢さんと坂東 裕太さんにお話を伺います。
INTERVIEW
INTERVIEW 01
優良なアイデアを選び、育てていく「ステージゲート制」
──新規事業創出プログラムがdocomo STARTUPへとリニューアルし、これまでのアイデア創出コンテストも新規事業創出コンテスト CHALLENGEに生まれ変わりました。どのような変化があったのでしょうか?
坂東さん:39worksもdocomo STARTUPも、リーンスタートアップの方法論を取り入れた新規事業創出プログラムという点は同じです。アイデア創出から顧客課題検証(CPF)、解決策検証(PSF)、収益性検証(PMF)まで、事業化を目指して伴走していきます。
39worksのときに開催していたコンテストは、フェーズでいうとアイデア創出の部分を主に担っていました。CHALLENGEになってからは、CPFのフェーズを担いながら、事業に繋がる質の高い事業アイデアを育てつつ絞り込んでいくという役割に変化しています。
──アイデアを育て、絞り込むという役割に対して、コンテストの内容はどのように変わったのでしょうか?
金さん:段階的にアイデアの絞り込みを行う「ステージゲート制」を導入しました。これまでは、開始時に20チームを選び、コンテストの中で約半年かけて検証を行ってもらったあと、最終選考で5チームに絞り込んでいました。
ただ、最初の選考時点でアイデアが優れているチームと、最終選考時点で事業化が見込める精度にアイデアが育つチームは必ずしも同じではなく、「やってみないと事業化に繋がるチームを見つけられない」という実感がありました。
そこでCHALLENGEでは、自分たちがサポートできる限界のキャパシティまで通過件数を増やしました。現在は、300件ほど集まったアイデアから40チームを選出しています。選出後はコンテスト内で検証を進めてもらいながら、2ヶ月おきに選考を実施し、最初の選考で18チームに絞り、次の選考で最終的な5チームを絞り込みます。
──選考の基準はどのようなものになっているのでしょうか?
金さん:検証の進捗や仮説の精度など複数の観点がありますが、一番意識しているのは外の視点を入れて審査することです。最初の選考時から、起業家やベンチャーキャピタリストや新規事業に特化したスタートアップスタジオの方に入っていただいています。社内だけでは厳選して伴走するという構造上、どうしてもゼロイチに触れ合う機会が限定的になってしまうため、外部の方からの審査情報も重視しています。
INTERVIEW 02
挑戦する人を増やし、ドコモ全体の事業創出力を高めていく
──コンテストにステージゲート制を導入し、どのような効果を感じていますか?
坂東さん:キャパシティぎりぎりの人数まで受け入れたので、事務局としてはとても大変でした。ただ、結果的には検証量も多く、最終の仮説精度も素晴らしいチームが残り、満足のいく結果になりました。挑戦する人を増やせた、という面でもメリットがあったと思います。
──もともと20チームだったところから40チームになり、コンテストに挑戦できる人が増えたということでしょうか?
金さん:人数というよりは、これまでよりも“安く早く失敗できる”仕組みになったことにメリットを感じています。
コンテストの参加者には、稼働の2割を確保してもらっています。上長に承認をもらってはいるものの、現場での稼働が他のメンバーより少なくなるのは事実です。その状態で、不確実性の高い新規事業の検証を長期間続けることは、参加者の負担にも繋がります。
2ヶ月ごとの選考でしっかりと目利きをし、「今回はここまでで止めましょう」と早めに判断する仕組みで、事業になるか不安なまま検証を続ける状況を減らし、次なる挑戦へのモチベーションを保つことに繋げていけたらと考えています。一度チャレンジすると事業検証の解像度が何倍にも上がり、次回以降の精度が高まるので、何度でも挑戦してほしいと思っています。
──コンテスト以外にもう1つ、挑戦する人を増やすためのプログラムがあるとお聞きしました。そのプログラムについても教えてもらえますか?
坂東さん:コンテストとは別に、チャレンジプロジェクト イノベーションコースというプログラムを人事部と共催しています。
もともとはチャレンジプロジェクトという入社3年目の社員を対象にした、本業の中で高い目標に挑戦することを目的とした研修でした。人事部が主催していましたが、若手社員の専門性を高めるキャリア形成の必要性が高まっていることや、新規事業や新サービスを生み出したいという思いで入社してくる方が多いことから、人事部に働きかけ、今年初めて導入しました。
具体的には、稼働の2割を使って新規事業のことを学びながら、実際に事業創出に挑戦してもらいます。上期をインプット、下期を事業のアウトプットとしています。良いアイデアは選抜してGROWTHに持っていくことを想定した実践的な研修です。
──何人くらいの方が参加されているんでしょうか?
坂東さん:今年から始まる試験的な取り組みだったので、挙手制で参加者を募集しました。当初、参加者数は100人の想定でしたが、212名から応募があり、結果的には全員を受け入れることにしました。
金さん:想定の倍の人数なので、事務局としては必死に対応しました。その甲斐もあって、プログラムが終了していない現時点でも「この講義を毎週楽しみにして会社に来ています」「新規事業の解像度が上がり、仕事の現場にも活かせています」といった嬉しい声をもらっています。ここまでの反応は想定以上でしたが、満足した研修で終わらせるのではなく、ここから事業化という結果に繋げていくのが重要だと思っています。
坂東さん:「下期には絶対事業化するので、見ててください」という熱い宣言を私にしてきてくれた本気度の高いメンバーもいて、これからがさらに楽しみですね。
INTERVIEW 03
ボトムアップの新規事業創出といえば、docomo STARTUPと言われるプログラムを目指して
──新たな取り組みを通して、CHALLENGEが今後目指していきたいことを教えてください。
坂東さん:docomo STARTUP全体を通して目指しているのは、社会にインパクトをもたらす事業を作っていくこと。そこに、新規事業人材を増やしていくことも含まれ、CHALLENGEとしてもそのために必要な役割を担っていけたらと思います。
金さん:事業を作れる人を育てて終わりでなく、共に事業を作っていく人たちを集め、本気で取り組める環境を提供していくところまでを、docomo STARTUP全体で取り組んでいく必要があります。なので、CHALLENGEの前後の取り組みであるCOLLEGEやGROWTHとの接続も大切にしていきたいですね。
──CHALLENGEより手前のフェーズでの活動であるCOLLEGEに期待したいことはありますか?
坂東さん:参加者が新規事業に必要な知識を獲得し、マインドを醸成することを期待したいです。ドコモグループで働く人の多くが、新規事業を経験していません。具体的な新規事業の進め方をインプットするタイミングや機会がないまま新規事業に挑戦すると、どうしても効率の悪い進め方になってしまいます。これは、39worksの時から実感していた課題でした。事業検証の方法を学びながら、事業検証もして、本業もあるという状況では、疲弊してしまいます。
金さん:ある程度、事業検証のセオリーが頭に入っている状態の方が、事業検証がスムーズになり、負担も軽くなりやすい。社内でやる以上、ある程度のフェーズまでは本業との両立が前提条件となります。本業があっても何度も挑戦してもらえるようなプログラムにするためには、インプットとアウトプットを分散して負荷を軽減していく必要があります。
COLLEGEで知識とマインドを身につけた参加者が、CHALLENGEに集まってくることで、サステナブルな取り組みとして新規事業創出に向き合える仕組みを構築していきたいと思っています。もちろん、検証の質も高めることで、事業化の確度も上げていきたいです。
──CHALLENGEの後のフェーズを担うGROWTHに対してはどうでしょうか?
坂東さん:39worksの時はコンテストが終わってから、次のフェーズをどうするか判断するという流れでした。CHALLENGEでは、行動量が多く、検証の進行が早いチームに関してはコンテスト終了を待たず、GROWTHへ移行する仕組みになっています。すでにGROWTHに移行し、社外での実証実験を開始したチームもあります。このような形で柔軟に連携していけたら嬉しいですね。
──3つの取り組みの役割分担や連携を強めることで、docomo STARTUP全体で生み出せる事業を増やしていくのだという思いが伝わりました。最後に、CHALLENGEとしての意気込みを聞かせてください。
金さん:CHALLENGEを、最終的に世界を変えるような大きな事業に育つアイデアをどんどん育て輩出していく場にし、ボトムアップで新規事業に挑戦する取り組みといえば、docomo STARTUPという共通認識を作っていきたいです。docomo STARTUPに参加することはドコモ社員の特権であり、ここから新しい事業を作っていくことが夢です、と言ってもらえるような魅力あるプログラムにしていきたいです。
坂東さん:docomo STARTUPを通じて新しいキャリアを築けた、新たな挑戦ができたという成功体験を持った人が増えるといいですよね。新規事業に関わったことがある人が増えていけば、ドコモグループ全体の事業総出力も底上げされていくはずです。事務局として大変な面はたくさんあるのですが、これからもCHALLENGEに関われる人はどんどん増やしていけたらと思っています。